I Just Wanna Hold You

02


「大たわけ!」
「たわけの大安売りだなあ……」
「たわけをたわけと言って何が悪い、たわけ」
「はいはい、どうせ俺は馬鹿で変態ですよ」
 苦笑しながら、士郎はアーチャーの白い髪を梳き、額にキスを一つする。
「……オレは、止めたからな。後悔しないというのなら、好きにしろ」
 諦めたように、すねたように、アーチャーはそっぽを向いた。そのまま息を吐き、枕に頭を預ける。実に遠回しな、同意。士郎は堪えきれずに、ぷっと吹き出してしまった。
「可愛いよな、アーチャーって」
「何だと!?」
 ようやく力を抜いてくれたと思ったら、アーチャーは士郎の一言に激昂した。どうやら、地雷だったらしい。基本的にアーチャーの地雷は多すぎるのだが、まあ、同性であれば身長190センチ近い、大の男を普通は可愛い呼ばわりしない。恋は盲目、というあれだろうか。けど、士郎は本当に可愛いと思ってしまったのだから、仕方が無い。
「貴様のその眼窩に入っているのは、粗悪な硝子球か! 誰が可愛いだ、誰が!!」
「アーチャー」
 するり、と脂肪のない腹部を撫でられたアーチャーが、小さく息を詰めた。そのまま、士郎はアーチャーの膝の間に割り入って、逞しい体のラインを確かめるように、輪郭を掌で辿る。
 アーチャーの身体は、とても綺麗だと士郎は思う。鍛え上げられた筋肉で全身が覆われているから、女の子のような柔らかさは無いけれど、戦うために引き絞られた体はいかにもしなやかで、手触りだって決して悪くない。今は、ところどころで少し傷が引っかかるけれど。
「ちょ、ちょっと待て、――待て」
 まだ往生際悪く、腹を括ったはずのアーチャーは士郎の手を押し留めようとした。士郎は首を傾げた。
「何?」
「その、お前、こういう経験が――男と、寝た経験がある、のか」
「あるわけないだろ。けど、セックスのやり方なんて、相手が女の子でも男でも、大差は無いんじゃないかな、……多分」
「……物凄く不安になる言い様だな」
「そういうアーチャーはどうなんだよ……って、訊くまでも無さそうだな」
「なら訊くな!」
 それは一瞬で消えたが、自ら発した言の通り、アーチャーが、今まで士郎に見せたことの無いような、不安げな面差しを浮かべた。抱いた経験はあっても、抱かれた経験は無いのだから、当然と言えば当然なのだろうが。そもそも、士郎とてそんなに異性経験があるわけではないが、明らかに年上なのにアーチャーは性行為自体にあまり慣れていなさそうだ。そこでまた可愛いとか言うと、完全に臍を曲げてしまうのが分かっているので、士郎は言わなかった。
 けれど、ああ、もっと見せて欲しい。今まで知らなかったアーチャーを、もっと見せて欲しい。
 もっと素直に泣いて欲しい。もっと素直に笑って欲しい。自分は薄汚い掃除屋に過ぎないなどと卑下するな。後悔ばかりして、皮肉屋の仮面を外せない、少しも素直じゃないお前。たまには、眉間の皺もほどいてしまえ。いつもいつも、自分自身に苛立って、優しさを人に与えることを知っているのに、自分に与えられることは拒むお前。器用すぎて不器用な、お前が好きだ。
 胸筋が淡く影を落とす線を、士郎の舌が辿る。
「あ、うっ」
 アーチャーの喉がのけぞった。胸の僅かな突起を摘まれて、揉みこまれたせいだ。反対側にも、濡れた温みを感じ、アーチャーは肩を揺らして、声を飲み込んだ。
「っ――」
 尖りに吸い付いた士郎は、ちゅ、と音を立てながら嬰児が乳を飲む仕草で吸い上げる。一方で、指でこねるようにしてもう片方を弄る。
 アーチャーは声が洩れないように、唇を噛んで更に両手で口を押さえた。
 魔力不足の身体は、小さな部分に与えられる刺激に敏感すぎた。そうしないと、ともすれば身が勝手に淫猥にうねるのを止められそうにない。
 何でこんなことに。
 何時からか、人の体温を感じることが苦手になっていた。それが冷たくなる瞬間を、命という温かさが掌から零れる瞬間を、嫌と言うほど知らされて。それが悲しくてどうしようもなくて、だから、剣立つ荒野を1人で歩き、求め続けた理想の果てに、世界のための殺戮人形となった。それなのに、どうして。
 触れてくる、この手をどうして突き放せないのだろう。
 舌に舐められ、押し潰され、突かれ、指で揉み込まれて転がされて、全てがアーチャーを追い上げようとする。揺らがない鋼の瞳が、生理的にじわりと潤んだ。
 軽く歯を立てられて、腰が小さく浮く。
「……アーチャー」
 士郎が呼ぶ。胸から顔を上げて、アーチャーを見る。赤く腫れ上がった胸の飾りが、唾液に濡れそぼりてらてらと光って、褐色の肌にひどく淫靡な様を与えていた。
「声、出した方が楽なんじゃないか」
 口を塞いだままで、アーチャーは、嫌だ、という意思表示で首を振った。誇りを捨てたとは言っても、あられもない嬌声を士郎に聞かせるのも恥ずかしいし、何より癪だ。
 そのアーチャーの手を、士郎の手が絡め取る。士郎のものよりずっと大きな手、剣や弓を握り慣れて、節くれだった器用な手を、布団の上に縫い止めた。何人をも殺し、何人をも救ってきた、この手。
「血が出てる、アーチャー」
 耐えようとして強く噛み締めるあまりに、いつの間にか破れたアーチャーの唇に、士郎が顔を寄せる。
 その、唇に薄く滲んだ血を舐めた士郎は、啄むように口付けた。そっと促す動き。アーチャーが、小さく唇を開いてみると、躊躇い無く舌が滑り込んできた。ぎこちなく、それにアーチャーは応じる。
 舌を絡ませあう、濡れた音が微かに響く。
「……っ、……ふ……」
 呼吸の続く限りに唇を重ね合い、存分にアーチャーの舌と唇を堪能した士郎は、首筋を吸いながらアーチャーの腰骨の辺りを撫でた。それから、怪我を負っている方と反対側の脇腹をゆっくりと撫で上げる。触れるか触れないかの強さに、アーチャーは思わず身を竦ませた。
「!!」
 急に、外気に肌がさらされる感覚に、目を見開く。士郎が、下着ごとスラックスを引き下ろしたのだ。ついでに、上半身に中途半端に引っかかっていたシャツも脱がされる。更に、士郎自身も身に着けていたものを全て脱ぎ捨てる。
「あ、やっぱり、下の毛も白いんだ」
 何処となく楽しそうに言う声に、アーチャーは反射的に士郎を殴りたくなった。だが、実行に移すには至らなかった。
「た、たわけ! ……は、あっ、ああッ……!」
 士郎の愛撫に否応無しに昂められた体の中心部は、既に熱く脈打ち始め、先走りを零している。それを手に取られ、ゆるゆると握りこまれて、アーチャーの体が跳ねた。
「あ、し、……ろう、……くッ……」
 堪らずに、声が洩れる。
 指でこねられて、上下に動かされる。それで、喘ぎ声が止まらなくなる。
「……う……あ……、ん、ああ……!」
 そのくせ、決定的な解放は与えられず、熱だけが溜まっていく。どうにかなりそうだ。今まで言ってきた皮肉やら罵倒やらに対する意趣返しなのか、これでは拷問だ。何て、甘い苦痛。
 熱い、熱い、熱い。出血のせいで冷え切っていた体が、熱い。意識が焦がされる。鋼色の瞳の端に滲んでいた涙が、筋を描いて流れ落ちた。
「やっ……もう、……も……う……」
 許してくれ、懇願にも似た声をアーチャーが零す。
 それを聞き届けたように、士郎は手を離した。そのことに奇妙な安堵と、達することが出来なかった物足りなさを僅かに感じたのも束の間。
「ひッ……」
 掠れた悲鳴。アーチャーの屹立は士郎の口に咥えられて、強く吸われた。
「し、士郎……、あっ……、馬鹿、そんな、やめ……」
 先端を突かれ、丁寧に舐め上げられ、腰が砕ける。士郎の愛撫はさほど巧みな部類ではなかったが、やはり元は同じ人間だから分かるのか、的確にアーチャーの弱いところを刺激してくる。
「――!!」
 深く咥え込まれて、舌を絡められ、喉の奥に擦りつけるようにされて、耐え切れずにアーチャーは士郎の口内に熱を放った。身体が、勝手にがくがく震える。もう、羞恥だとか屈辱だとか、そんな高度な思考は働かなかった。どうにかすると、意識が飛んでしまいそうになるのを、拳を握り締めることで何とかして繋ぎ止めようとする。
 ふう、と士郎は満足そうに口元を拭って息をついた。アーチャーの、いつもならば冷徹という何重もの鎧に頑迷に守られている筈の、守りを失った無防備な顔が目に映る。荒い息をつく、溶けた鋼。
「アーチャー……もう、大丈夫かな?」
 やや性急に、肩幅の割には細いアーチャーの腰を両手で抱え上げて、脚を開かせる。
「――ま、待て、待たんか、士郎!!」
 熱い塊をあてがわれた感触に、アーチャーが我に返ったように慌てて逃げようとずり上がる。
「何だよ」
 ここまできて、急にお預けを食らうことになった士郎は、やや不満そうに口を尖らせた。
「何だよじゃない! オレは、――女性ではないんだぞ。そ、その、濡れ、ないんだから、入るか! これ以上、オレに傷を増やす気か!? それとも何か、お前のモノは、勃起してても解していないところに入れられるくらい、お粗末な短小なのか!!」
「お前……テンパってても、言うことは言うんだな……」
 片方がテンパっていると、片方は冷静になるというが、士郎は今、正にその状態だった。
「まあ、でもそうか。濡れないよなあ」
 はっきり言って、士郎だって限界に近い。いつもは禁欲的なアーチャーが、自分の下で快楽に喘いでいる。自分よりも、はるかに強く大きくて憧れていた男が、だ。それは、若い下半身を直撃するのに充分すぎた。出来ることなら、今すぐにアーチャーの体に包まれたいと思う。けれど、男の体は男を容易に受け入れるようにはなっていないのだ。確かに今の状態は士郎にとって辛いが、士郎を中に入れることになるアーチャーの方が、もっと辛いに違いない。
「あ、……くッ……」
 濡らされた指が、アーチャーの秘められた場所に辿り着いて、解そうとする。ぬるり、とした感触と、異物が進入してきた圧迫感に、アーチャーは全身を強張らせた。
「アーチャー、力抜いて」
「う……」
 士郎は言うが、アーチャーとしてはそれどころではなかった。何せ、不自然な侵入者に対して、体中が警告を発しているのだ。あちらこちらの筋が、攣りそうになる。アーチャーは息を何度も吐き、とにもかくにも何とかして痛みをやり過ごそうとする。痛み自体は、アーチャーには慣れ親しんだ感覚ではあるが、これは今までに知ったことの無い、全く未知の苦痛だ。対応しきれない。
 そろそろと探るように、士郎の指がアーチャーの内部に入り込んでくる。気遣う動きでゆっくりと回され、進んでは引き、引いては進む。士郎が、開かれたことのない身体に、なるべく負担をかけないようにしようとしているのが分かるから、アーチャーも何とかして受け止めようとする。
 士郎の肩にすがる形で掴まる。自分を好きだ、という、自分とは違って欲することを知った少年に。少しは、応えてやろうと思う。
「……熱いな、アーチャーの中」
 笑う士郎の声も、大分熱に荒れていた。
「……士郎……、……っ」
 身体の前面を強めに擦られて、アーチャーが息を呑む。一度、解放されて収まっていた熱が、じわりと高まっていく。また、立ち上がりかかっている。
「いいんだ、ここ」
 変に理性が戻ってしまったから、直接的な言葉を受けて顔が火照る。
 けれど、理性なんてすぐに蕩かされてしまう。
「っ――」
 同じところを何度も刺激されて、喉からすすり泣くような音が洩れた。だから、指が増やされたのにも、アーチャーは気付けなかった。中を広げるように抉られ、かき乱され、涙がぼろぼろ零れ落ちても、それを止めたいとも、もう意識できない。
 辛うじて、士郎の肩を掴む手に、少しだけ力を入れる。
「……し、し、ろう、……もう、……いい……」
「いい、のか、……ほんとに?」
 頷いた。指が引き抜かれる感覚に身震いする間もなく、ひどくぬかるんだ昂ぶりが代わりに押し当てられる。
「……アーチャー」
 呼ばれる。もう一度、アーチャーは頷いた。
 ゆっくりと、士郎はアーチャーの中へと入ってきた。
「きつ……」
 士郎が小さな声で呟く。それは、仕方が無い。アーチャーだって、同性を受け入れるのは初めてだし、そもそもが女性のような柔らかな身体どころではなく、正反対の硬く鍛え上げられた身体だ。それでも、士郎は不平は言わなかった。アーチャーの長い脚の間をゆっくりと進んでいく。
 アーチャーは浅い呼吸を繰り返して、指の比ではない圧迫感に竦みあがりそうな体を、懸命に開こうとする。強張りかかるのを騙し騙し、士郎の体に押し付けようと試みる。
「アーチャー……!」
「あ、あぁ、あぁぁぁッ……!」
 そうすると、ぐっと突き込まれた。士郎の熱い塊が、腰を掴んで入り込んでくる。飲み込みきれない大きな熱に、押し広げられてどうしようもなく重い苦痛を感じる。そのくせ、その痛みには正体の分からない切なさが、ほんの僅か混じりこんでいた。
「だい、じょう、ぶか、アーチャー」
「は……っ、い、いいか、ら、続け、ろ……。一気に、こられる、ほうが、……まし、だ」
 2人共に息が荒い。士郎は、分かったと言って、繋がる動きを続けた。正直、アーチャーの狭い内部は、士郎にも強烈な圧迫感だった。けれど、これがアーチャーの体だと思うと、それすらも背筋をぞくぞくさせるほどの快感を与えてくる。
 きつい部分がずる、と抜ける。背を弓なりに反らしてしまうほどに衝撃は凄まじかったが、どうやらこれで全部入ったかと、アーチャーは噛み締めていた顎の力を抜いた。
 だが、すぐに揺すられた。
「あああああ!!」
 まだ。まだ入ってくる。一気に奥まで貫かれて、腹の中をいっぱいに満たされる。それなのに、まだ更に奥を探られている。士郎が、申し訳無さそうにアーチャーの顔を覗き込んだ。
「……ごめ、アーチャー、もう、ちょっとだから」
「……ぐッ……ちょっと、とは、どれ、くらいだ」
「後、半分……」
「――ッ!?」
 まだ、そんなにか! 思わず、音を上げかけるアーチャーの肌に、士郎は口づけた。
 軽く触れるだけのキスを、褐色の体のあちこちに降らせる。その受けた温みで、アーチャーの意識が少し散った。そして、痛みに萎えかかったアーチャーの体の中心部を柔らかく握る。
「ン、うッ」
 撫で上げられ、擦られる。そうすると、鋭敏な器官はたちまちのうちに反応した。そちらの感覚に集中した方が良さそうだ、とアーチャーは思ったが、そうすると強い快感にうねる身が楔で繋ぎとめられているのを、嫌でも意識させられる。むしろ、自分から士郎の熱を内壁にこすりつけるような形になって、びくりと体を引きつらせた。
「や、あ、あ、あ」
 すると、強い突き上げが来て、身も世も無い風情で、アーチャーは頭を振り乱した。いつもは後ろに流されている髪が、勝手気ままに散らばり落ちる。
 もう、声を言葉にするのは無理だ。意味の無い喘ぎだけが、喉から搾り出される。涙が止まらない。いや、涙だか汗だか分からない滴で、ずぶ濡れだ。腹の筋肉が痙攣しかかって、呼吸すらうまく出来なくなる。
「はっ……あ、あぁ……」
 これが自分の声か、と驚くような乱れた嬌声。こんな声が、自分から出るなんて知らなかった。
 内臓が押し出されるのかと思うほどの圧迫、ぐっと上に体重が乗って来る重み。最奥まで入り込んでくる熱に、ようやっと士郎が全部入ってきたのだと分かった。ぼんやりと視線を上げると、士郎の顔が間近にある。
「……アーチャー、苦しく、ないか」
 そう言う、士郎の方が苦しそうだと思うのは、果たして気のせいだろうか。答えようにも、もはやアーチャーにはろくに言葉が出せない。だから、返事の代わりに震える手を何とか伸ばして、士郎の背を抱き寄せた。
 アーチャーの白い髪に唇を寄せて、士郎は熱い声で囁いた。
「お前の中、……気持ちいい」
 そうか、とせめて答えてやりたかったが、やはり声は出ない。狭い場所を強く押し拡げられているのだから、苦しいことは苦しい、当たり前だ。けれど、何だろう、決して不快ではなかった。そういえば、途中から、これは魔力をもらうための儀式だということを、忘れていた気がする。アーチャーは、士郎を促すように、微かに笑った。それが合図。
 士郎が、ゆっくりと動き出す。
 いつしか、それがアーチャーを貪る動きに変わっていく。少しずつ角度を変えて、抽挿を繰り返す。
 士郎の背に腕を回しながら、アーチャーは、痛みの中に快楽の成分が混じってきたことに気付いた。その感覚に手を伸ばし、それにすがる。
「アーチャー……アーチャー……!」
 何度も、士郎が呼ぶ。間近に感じる、呼吸と熱と鼓動。心臓の音はもはや混じり合ったように、どちらのものか分からない。
「ああッ――!!」
 一際強く内壁を抉られて、アーチャーは仰け反った。視界を奪われるほどの強すぎる快感に、昂ぶりを放つ。
 少しそれに遅れて、深く貫かれた体の内部にも濡れた熱を感じた。士郎の放った魔力の奔流を受けて、震える身体がそれを吸収していく。元々、同じ存在であるからか、魔力の浸透は早いようだった。ほ、とアーチャーはようやく呼吸が整える余裕が出来て、士郎から手を放した。
 だが。
「いッ……!?」
 内部に入り込んだままの士郎の熱が、また硬くしこってアーチャーを擦る。思わず、アーチャーは小さな悲鳴を上げた。士郎は、アーチャーの上にのしかかった態勢のまま、荒い息を隠さずに告げてきた。
「悪い、アーチャー……もう、一回」
「な、何!? あ、い、やだ、やめろこのたわけ、もう、無理、だ……!」
 アーチャーは慌てて赤銅色の髪を引っ張って士郎を引き剥がそうとしたが、深く繋がっている今の状態では、逆にそれが予期せぬ刺激を与えてくる。
「あっ、あ……!」
「……お前、俺に、好きにしろ、って、言ったよ、な。だから、好きにする」
「たわけ、勝手に都合のいい、解釈を、するな、……あ、やめ、ろ、……あっ――」
 士郎は穿つように打ち込んで、アーチャーを揺する。快楽に過敏になったアーチャーは、意思はともかくとして、身体がまた反応を始めるのに身悶えした。
「好きだ」
 はっきりと、呼吸音に紛れない声が聞こえる。真摯過ぎる、声。
「好きだ、アーチャー」
「――!!」
 アーチャーには、もう、それ以上抵抗する術が無かった。

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