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Aast 2 すれ違いの願い


「……し、士郎……!」
 暫し、追憶に意識を遊離させていたアーチャーは、喘ぐようにその名を呼んだ。
 自分のものではない掌が、腰の辺りから衣服の中に入り込んできたせいだ。
「……アーチャー」
 背中から脇腹をゆっくりと撫でて来る手。熱い切望を隠さない声。
 自分の心臓が跳ねる音を、アーチャーは自覚する。それが、正負いずれの感情から来る反応なのか、考えるまでも無い。六年ぶりに感じる士郎の体温に、正直、心の奥底が震えそうになる。しかし、このまま流されるわけにはいかない。アーチャーは、心の檻を強固にする。
 これ以上、士郎が己の内側に入り込んでこなくなるようにと。
「なあ、俺と一緒にいるの、嫌か」
 アーチャーが身を硬くするのを感じ取ったか、士郎はそれ以上、褐色の肌をまさぐろうとはしてこなかった。そして、静かに訊く。
 アーチャーはすぐには答えられない。
 ――嫌、どころか。
 理性は士郎を手放さなければならない、自分に縛り付けてはならない、と頑迷に主張しているのに、本能は再び出会えたこの温もりに喜んでいる。士郎が求める手を伸ばしてくるならば、きっと、応えて抱かれてしまう。そうなってしまったら、恐らく二度と振り払えなくなる。
 だが、もう駄目だ。もう終わりにしなければ。
 アーチャーは、懸命に理性をフル回転させて、全てをねじ伏せる。
 ……もう、いいだろう。
 愛しているなどと。そんな美しい言葉を与えられるのに、オレは相応しくないのだから。
 待っている、という約束は果たした。そして、これ以上の先への約束は出来ない。してはいけない。士郎を、この世ならざる者、未来の亡霊の呪縛から解放してやらなくては。自分の足で歩いていこうとする者に、いつまでも導き手は必要無いだろう。だから、思い出以外を、何も残さないようにして。
 そろそろ頃合、か。
 思えば、随分長く、現界していた。こんなに長くて楽しい現界は、守護者となってから初めてだった。それで、充分だった。愛しい少女にもまた会えた。答えも得た。幸福感を味わうことも出来た。何を、思い残すことがある? ただの「記録」としてではあっても、きちんとこの現界の記憶は残るのだ。オレはもう、この上なく幸せではないか。これ以上、望むものなどあるか?
 そう思うと、アーチャーは自分の頬に自然と微笑が浮かんでくるのを感じる。
「士郎」
 そのせいか、かつてないほど素直に、アーチャーは心境を口にすることが出来た。
「オレがお前をどう思っているのか、正確なところはオレ自身にもよく分からない。だが……」
 一拍の呼吸を置いて、アーチャーは士郎の問いかけへの答えを告げる。
「お前のことを、大切だと、思う」
 ひどく、清々しい気分だった。
 迷いも悩みも、こんな風にして晴れていくのか、と。
 考えてみれば、何も難しいことではなかった。なまじ、自分が目の前にいるから、士郎を惑わせるのだ。灰は灰に、塵は塵に――死者は死者に。あるべき所にただ帰ればいい。オレはマスターのいないサーヴァントなのだから、そんなに難しいことでもないだろう。そうだ、一緒にいたのはたかだか一年程度で、離れていた時間はずっとそれよりも長いのだ。この先、永遠に離れたところで、別に、何の問題があろうか。
 俺はお前とは違う、と、士郎は己の未来としてのアーチャーを否定した。ならば、歪んだ未来の姿でしかないアーチャーを、士郎が欲するというのは、甚だ本末転倒ではないだろうか。
 そんな事に、もっと早く気付けば良かった。そうすれば、士郎をもっと早く自由にしてやれたのだ。過去しか無い者は、未来ある者と共に、同じ道を歩いていくことなど不可能なのだから。
 オレがいなくなれば、士郎は怒るだろうか。嘆くだろうか。……傷つく、だろうか。
 けれど、それもきっと一時的なことだ。生きている限り、どんな傷を負っても、時間が優しく癒してくれる。生者は、死者と違って、変わっていくことが出来るのだから。
 所詮、我らはこの世に漂う夢。そう、夢は夢、いつかは醒めなければならない。夢に心囚われたところで、それは、手に入れられる現実の幸せを、掌から零してしまうだけだ。
 幸せに。士郎、お前が人の世で幸せに笑っていてくれれば、オレはそれでいい。――それだけで、いい。
 オレ達の関係は、そもそも、ひどく不自然で歪んだもの。いずれ、ひずみは大きくなり、取り返しのつかないことになりかねない。そうなる前に。
 アーチャーの肩から、力が抜けた。微笑も、限りなく透明になっていく。
(……こいつがこういう顔をするときって、大抵、ろくなこと考えてないんだよなあ)
 士郎は、アーチャーの、いっそ透き通りそうな笑顔を、じっと見つめた。そして、アーチャーの顔の輪郭を指でなぞり、それから。
 そっと、壊れ物を扱うかのように、士郎はアーチャーから手を離した。元の位置に座り直す。
「……士郎?」
 以前の士郎ならば、熱情のままにアーチャーを押し倒してきていただろうが。訝しげに問いながらも、アーチャーは何処か安堵していた。ほら、こんな風に士郎は変わっていける。ああ、だから大丈夫だ。
「お前を抱きたかったけど」
 言って、士郎は小さく首を振った。
「今日は、止めておいたほうが良さそうだ」
 肩をすくめて、グラスの中に残っていた酒を飲む。
「何故、そう思った?」
 アーチャーは、少し乱された服の裾を整え、士郎に目を向けた。
「どうせお前、抱こうとしたら、嫌だとかやめろとか言うだろ。六年ぶりなのに、帰ってきていきなりそれ聞かされるの、結構クる」
「……居間なんかで、盛ろうとするからだろうが」
「へえ?」
 士郎が、含み笑いを浮かべる。
「居間じゃなかったら、いいんだ?」
「……良くない。今日は疲れているだろう、さっさと休め。後はオレが片付けておくから」
 露骨に顔を顰めてみせたアーチャーに、士郎の笑いが深くなった。
「意外に、俺、時差ボケしてないんだ。そんなに疲れてない」
 宴会で、それなりに飲んでいたと見えた士郎は、一杯を飲み干すと、そのままグラスを置いた。パブの本場で、酒の飲み方までも覚えてきたのか。
「だから今度はさ、お前の話、聞かせてくれよ。六年間、お前はどうやって過ごしていたか」
 抱かなくても、こうやってお前の顔を見て声が聞けるのが嬉しいからと、士郎は座卓の上で両手を組み合わせて、アーチャーを見つめた。
「とりたてては、何も面白い話は無いが……」
 アーチャーは、グラスの中のウィスキーで口の中を湿してから、士郎の求めるままに話を始める。もっとも、アーチャー自身のことというよりも、衛宮邸に出入りする人々の話が多かったが。  古書店での仕事。セイバーが、大河の知り合いの剣道場で手伝いを始めたこと。慎二が東京に出たため、桜は間桐の家にほぼ戻り、ライダーも彼女を支えていること。そのライダーは、桜にマウンテンバイクを買ってもらって、爆走ぶりに磨きがかかっていること。桜が魔術師としての間桐の家をどうするかは、凛と相談してから決めたいと考えていること。イリヤスフィールが、アインツベルンのホムンクルスとしての宿命を打破できるのかどうかは定かではないが、少しずつでも成長している彼女の姿が嬉しいこと。大河は……まあ、相変わらずだ。現在、土蔵がある意味、アーチャーの城と化していることや、庭の家庭菜園はセイバーも楽しんで育てていること。ギルガメッシュがほとんど子供の姿でいるため、セイバーは強引な求愛に悩まされずにいること。相変わらず、現世に馴染みまくっているランサーに、葛木宗一郎との結婚生活を心から満喫しているキャスター。彼等と交わす、他愛の無いやり取り。
 話をしていると、この生活がどれだけ楽しかったか、改めて身に染みる。死んだ後で、こんな風に暮らせるなんて。
 終わらせると決めた、そこに後悔は無い。長い現界に、自然としがらみは増えたが、それをゆるゆると片付けていこう。そして、英雄の座にこの記憶を返す。
 それは、死にたがって消えたがっていた時とは違う、ひどく穏やかな、満たされた心地だった。それも、士郎のおかげだ。もう、守護者でいることに絶望はしない。
 感謝している。
 アーチャーの声が途切れると、一瞬の静寂が居間を満たす。士郎は、無理にその沈黙の間を破ろうとはせずに、そのせいか、静寂は柔らかく感じられた。
「お前は……これから、どうするんだ?」
 アーチャーは、士郎に訊いてみた。
「一応、遠坂の弟子から助手にランクアップはしたけど、まだ流石に一人前の魔術師とはいえないし、こき使われることには変わらないんだろうなあ。けどまあ、俺はお前とは違うやり方で、正義の味方を目指すよ」
「……そうか」
 それでいい。
 お前はオレの悔恨を否定し、未来を乗り越えてみせると宣言した。ならば、その道を信じて進めばいい。
 士郎が、人間の衛宮士郎のままでいるために。この、英霊エミヤには繋がらない、自分自身の道を。
 交わらない過去と未来の、これは、本来はある筈の無い、奇跡のもたらした刹那の交錯。
 未練は無いつもりだったが、少しだけ、胸の奥に痛みを感じる。
 アーチャーを見つめていた士郎は、ちらり、と時計に目をやった。
「もう一時だな。さすがに、ちょっと眠くなってきた」
「なら、寝ろ。自分では分からなくても、疲れているんだろう」
「かも、な」
 反発せずに、士郎は頷き、立ち上がった。自分の使ったグラスをキッチンに持って行き、洗ってから片付ける。このせっかくの土産も、置き場所を考えておかないと、藤ねえに程なくして全部飲まれてしまうだろうか、とアーチャーは座卓の上のボトルに何となく目をやった。
「士郎」
「何だ?」
「この酒、美味かったぞ」
 士郎が破顔した。すい、と座ったままのアーチャーの傍に歩み寄り、片膝をつく。
「そうか。良かった」
 ちゅ、と軽く音を立てて、士郎はアーチャーの額に口づけた。
「っ……士郎、お前!」
「おやすみ、アーチャー!」
 士郎は、思わず反射的に殴ろうとしたアーチャーから、身を躱して楽しげな声を立てた。ひらひらと手を振りながら、居間から廊下へと出て行く。
 戸を閉める音と共に、士郎の姿が消えた。
 小さく息を吐き、アーチャーは士郎の唇が触れた額に、指を当てた。
 その箇所だけ、熱を持ってやけに温かいと感じたのは、きっと気のせいだ。


「こんにちは、アーチャー。ご機嫌いかが?」
 スカートの裾を両手で摘み膝を折り、イリヤスフィールは高貴な仕草で、典雅な挨拶をしてみせる。
「私は相変わらずだよ、イリヤスフィール」
 緩んでいた本の綴じを直していたアーチャーは、彼女を出迎えるように、店のカウンターの奥から立ち上がった。
 だが、イリヤスフィールは不満そうに雪銀色の柳眉を寄せる。
「わたしを、そんな他人行儀な呼び方をしたら怒るわよ、って、何度も言ったでしょう、シロウ」
 衛宮士郎の――エミヤシロウの、妹であり姉である少女は、アーチャーを「シロウ」と呼ぶことの出来る、数少ない一人だった。そしてそれは主に、彼女の気分を害した時のアーチャーに対して、持ち出される呼び名だ。イリヤスフィールは、アーチャーがシロウと呼ばれることを好まないことを、知っている。その名は、この現世に生きている衛宮士郎のものであると、アーチャーは思っているからだ。苦笑したアーチャーは、素直に謝罪した。
「……そうだな。すまない、イリヤ」
「よろしい」
 腰に両手を当てて胸を反らすようにして、イリヤスフィールは鷹揚に頷いた。聖杯戦争の頃から少しだけ、それでも確実に伸びた背丈。自分が処刑された時系列では、この少女はどうなったのだろうか、とふとアーチャーは思い、すぐに小さく首を振った。
 益体も無い感傷だ。現界を終えると決めたのに。
 気を取り直したアーチャーは、カウンターの隅に椅子を持ってきて、イリヤスフィールの手を取り、そこにエスコートする。
 椅子に腰を下ろしたイリヤスフィールは、手にしていたバッグから、小さな包みを取り出した。
「はい、これ。セラが作ってくれたクッキーよ。今日はそうね、ミルクティーがいいわ」
「ここはサロンではないのだがな……」
 そう言いつつも、アーチャーはイリヤスフィールのリクエスト通りに、カウンターの下から、ストックしてある茶葉を取り出した。
 アーチャーがこの古書店で働き出してからというもの、こうやって時折、イリヤスフィールが茶菓子を持参して顔を出してくることがあった。それで気付けば、喫茶店でもないのに茶器一式が揃えられ、アーチャーが気が向いた時は客に振る舞われるようになった。以前は、いかにも古色蒼然とした古書店だった様相は、アーチャーが最初に徹底的に大掃除を行ったために、整然と明るい雰囲気になった。その上に、本が手に取りやすいように棚が整理されたり、熟読用の椅子が用意されたりして、居心地の良さを醸し出すようになり、客足が増えた。もっとも、店長が男前に替わった、という評判もあるだろうが。
「アーチャーの淹れるお茶、いつも美味しいわ」
 紅茶を口にしたイリヤスフィールが、微笑む。自然に、アーチャーの口許も綻んだ。
「それは良かった」
「ねえ、一つ訊いてもいいかしら」
 カップを両手で包むように持ちながら、愛らしくイリヤスフィールは首を傾げる。
「何だね」
「あなた、今、幸せ?」
 唐突に投げかけられてきた問いに、アーチャーは目を瞬かせた。だが、その問いに対する答えは、既に分かっている。アーチャーは頷いた。
「ああ」
「本当に?」
 最高級のルビーを指す、ピジョン・ブラッド。その輝きを思わせる、イリヤスフィールの紅い瞳が、アーチャーの褐色の相貌を凝視する。一見、儚げに見えて、その実は強い輝きを持った瞳の色を、アーチャーは真っ直ぐに見返した。
「君に嘘をついても仕方あるまい」
 アーチャーは、笑うともつかない、不分明な表情を作った。
「だが、何故、そんなことを?」
「シロウが、帰ってきたから」
「……それは」
 イリヤスフィールは、士郎とアーチャーの関係を知っている。衛宮邸の住人ではないイリヤスフィールだが、頻繁にやって来る彼女に対し、アーチャーに対する態度を士郎は遠慮も無く隠し立てしなかったため、ランサーに知られたことを事故だとすると、こちらはある意味、必然だった。強引になされたものではあったが、キスシーンまで目撃されては、言い逃れのしようが無い。
 いがみ合ってばかりいたシロウ同士が仲良くなった、とイリヤスフィールは二人の仲を、むしろ喜んだものだったが。何と答えるべきか、アーチャーは言いよどんだ。
「あのね、アーチャー」
 イリヤスフィールが、カップを置き、こっちに来て、と手招きする。アーチャーは逆らわずに、小さな体の義理の姉妹に近寄った。
 すると、イリヤスフィールは、大柄なアーチャーを抱き寄せた。アーチャーは、思いもかけないイリヤスフィールの行動に面食らう。
「……イリヤ?」
「あなたは幸せになっても、いいんだからね」
 耳元で言い聞かせるように、イリヤスフィールは囁いた。
 アーチャーの、鋼色の目が見開かれる。
「幸せに、なってもいいの」
 自分が不幸だなどと、アーチャーは自惚れたことは無いが。
 この、雪の化身めいた少女に、幸せにと言われると、胸を突き刺されるような気がする。
 十代の少女にしか見えない姿ながら、実の年齢は、衛宮士郎よりも一歳上のイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
 冬の聖女、ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンを原型とし、同じ鋳型から作り出される、神の摂理に拠らぬ人造の生命体ホムンクルス――フラスコの中の小人の女達。柳洞寺の地下空洞にて、その魔術回路を大聖杯の炉心と為したユスティーツァと、同じ規格品であるが故に、聖杯の器として使い捨てられる消耗品。
 イリヤスフィールはアインツベルンの長い歴史の中、初めて人間の魔術師の精を受けたホムンクルスの母胎から生まれてきた。心臓に聖杯を宿し、出産前から最高級のホムンクルスになるように、無茶な魔術調整を繰り返し受けてきた彼女への負荷は、著しい成長の遅れという形で如実に現れていた。
 道具であれと、生み出された命。
 第四次聖杯戦争にて、母親であるアイリスフィールを失い、父親である衛宮切嗣はアインツベルンから裏切り者として見做され追放を受け、イリヤスフィールに再会することなく、後に世を去った。
 君に幸あれかし、と願うのならば、むしろアーチャーがイリヤスフィールに、だろう。切嗣に命を助けられ、彼の義理の息子として、確かに衛宮エミヤ士郎シロウは、イリヤスフィールから実の父親を奪ったのだから。
 かつては無邪気な残酷のままに、士郎を殺しに来た彼女は、今ではすっかり憎悪の念を溶かし、相変わらず浮世離れしながらも、それなりにこの冬木の土地に馴染んで生活していた。
 このイリヤスフィールは、アーチャーがかつて置き去りにしたイリヤスフィールとは、別の存在だ。だが、ここにいる彼女が幸福に微笑んでいるのならば、あのイリヤスフィールもそうであると信じられるような気が、する。それは、ただの自己満足の欺瞞なのかもしれないが。
「イリヤ」
 アーチャーは、イリヤスフィールの華奢な背を、そっと撫でた。慈しむように。
「ありがとう」
 いつか、自分は守護者として世界に使い減らされ、磨耗しきって、存在すら消滅してしまうだろう。この優しい日々の記録も。それでも、〝世界〟に行使される殺戮人形でしかないこんな自分にも、幸せを祈って願ってくれる人がいるのだと、それを知れたのだから、この現界は決して無駄ではなかった。
「私は、本当に幸せ者だよ……姉さん」
 心から、アーチャーは言う。
 紛れも無く、至福の感情に満ちて。
 イリヤスフィールが、笑う気配があった。
「今日は、いやに素直なのね。何時もは、姉さん、なんて呼んでくれないのに」
「たまには」
 終わらせると決めたのだから、心残りはゼロに近い方がいい、とはイリヤスフィールには決して言えないが。
 だから、すまない、と心の中で謝る。
 オレがここに居ると、士郎が、自分の幸せを見誤ってしまうから、オレは現世から消える。
 そして、まだ祈ることが許されるのなら。オレの大切な人達が、どうか、末永く幸せでありますように。オレにとっては、それ以上の幸せは無い。
 アーチャーは願う。
 自分以外の全ての人の、幸福を。
 勿論、衛宮士郎の幸福も。何よりも。